18世紀から続くグローバリゼーションの変遷、奴隷貿易、人権侵害と補償問題等、朝日新聞社の花形コラムニストの筆が、縦横に冴え渡る。

[新しい戦争]
テロリストは、自らは戦士であり、その行動は戦争であり、少なくとも戦争捕虜の待遇を求める。しかし、人質を取り、非戦闘員を殺傷する彼らは、明らかに犯罪者である。
しかし、それは国内法規の範囲を超え、国家・社会の安全保障上の脅威となっており、今後は平時と戦時の境界が曖昧になり、イスラエルが直面している内戦状態が、途上国では常態となるだろう。

[包括的核実験禁止条約 米国の一国主義]
第一次世界大戦後、国際連盟の設立に奔走したルーズベルト。そのベルサイユ条約の批准が、自らが大統領を務める米国で否決されるという悲劇に見舞われた。ウィルソンの悲嘆を目の当たりにした海軍次官補こそ、かのフランクリン・ルーズベルトだった。彼は、ベルサイユ条約の不備(ドイツに対する厳しすぎる取り立て)がナチス政権を育んだことを教訓とし、第二次世界大戦後、敗戦国への戦後補償要求を行わないことを決めた。
そして日本とドイツは連合国(国際連合)の一員となり、現在に至った。
クリントン、ブッシュ両政権の「米国一国主義」は奢りの表れであり、国家ナルシズムは綻びを生む。彼らはルーズベルトの成果、すなわち「歴史に学ぶ」ことを覚えなければならない。

[グローバリゼーションとは何か]
理念でも構想でもなく、それは過程であり、インターネットも英語も道具でしかない。
「グローバリゼーションとは、かけがえのない自分や共同体の多様な価値観をなみなみと注ぎ、それを通じて世界に向けてそれを発現し、表現するために役立たせる容器と心得るべきものなのだ」
なるほどなぁ。

日米同盟と米英同盟についての比較論功も興味深いものがあります。それにしてもイージスシステム、MDシステムの情報が海自内で漏洩し、その一部(全部か?)が中国へ渡ったであろうと予想される事件は、米国軍部に計り知れない衝撃を与えたと思う。安保強化を目指すこの時期には痛い。、自衛隊の情報管理への不安感、否、日本国への不信感が、今後のF22獲得交渉に暗い影を落とすことは間違いない。

グローバリゼーション・トリック
著者:船橋洋一、岩波書店・2002年12月発行
2007年5月31日読了