2004年2月、陸上自衛隊イラク派遣部隊第一陣が出発。そのとき密かに、1名の民間人が覆面で同行していた……。異文化コーディネータとして通訳・交渉に当たった著者による、サマワ宿営地稼働までの活動の日々が綴られる。
派遣はイラクのためでなく、第一に防衛庁の"省"昇格のため、第二にアメリカのためであった。
現場の自衛官には何も知らされず、東京からの「命令」だけが下される実態。
"血尿"は当たり前。屈強な歩兵が倒れるほどの悪環境下、昼夜を問わず任務を遂行する現地の隊員たちの姿。
マスコミには過剰に敏感だが、「日本の政治・軍事・民事」を諸外国並みにすることを目標とする隊員たちは、自らを日本軍と呼んでいる。
大マスコミの取材は最初の3ヶ月のみ。その後に報道されるサマワの姿と実態の、天地ほどの隔たり!

史上最強と呼ばれる米軍だが、イラク派遣軍の三分の一が予備役州兵だ。ろくな訓練も受けずに現地へと派遣された彼らには、イラク人すべてが敵に見え、近づく者を容赦なく射殺する。イラク人の憎悪は増大し、米軍の恐怖とスパイラルとなって悪化してゆく。

内戦状態に陥ったイラクから、米軍は逃れられない。

「本当の意味での国際貢献」について、著者はこう述べる。
アメリカ追随、または戦争反対を唱えるだけでは、何も変わらない。パレスチナ問題の解決=アメリカの二枚舌外交の克服こそが問題だ。実際に困難であれば、穏健派のイスラム指導者を支援し、その影響力を拡大させ、過激派の勢力拡張を阻止しなければならない。
欧米式の民主主義を押しつけても反発するだけ。文化を尊重しながら、斬新的に制度を変えていくしかない。

報道できなかった 自衛隊イラク従軍記
著者:金子貴一、学習研究社・2007年5月発行
2007年6月9日読了