中年男の哀愁を赤裸々に描く表題作から「浅田次郎世界」に招き入れられた。初めての「彼」から離れられない妻と夫の長年の苦悩と解放劇、自分を捨てた母の最後の言葉がトラウマとなり、その後の人生を束縛されてきた女、生活を打破すべく据えた新たな志と、愛すべき女との狭間に揺れる青年心理など、生きることの切なさが光る七遍。
個人的には「ピエタ」が強く印象に残った。
北京、パリ、ローマ、戦後東京の下町、と舞台も多彩。数年後に読み返したい一冊となった。

月のしずく
著者:浅田次郎、文藝春秋・1997年10月発行
2007年9月7日読了