世界的に有名なこの作品、実は鑑賞するのは初めてだ。
三船俊郎、渋いなぁ。

ラストシーンは人間世界の不条理そのもの。
野武士全員の死亡が確認された後、百姓たちは、まるで何事もなかったかのように田植えに精を出す。景気の良い田植え歌に、太鼓と笛の音。誰にも見送られることなく、村を去る侍たち。
最終決戦の前夜、「どうなってもいい」と若武者(浪人だけど)に身を任せた村娘、"しの"。偶然にすれ違う二人。無言で問いかける若武者にも、彼女は目をそらし、過ぎ去る。ただ一度の振り返りで未練を断ち切り、あの一夜は夢幻だったかのごとく、田植え仕事に打ち込む……。
「今度もまた、負け戦だったな」
丘の上に急造された墓地の前で、三船俊郎は言う。
「勝ったのは、あの百姓たちだ。儂たちではない」

黒澤明監督、1954年、東宝作品。
TVサイズじゃなくて、ビスタサイズで見たかった。