紀元前五世紀のアテナイに住む若き知識人、パイドロス。当時の売れっ子文筆家、リュシアスの自宅で新作を直に聴いて興奮収まらぬ彼は、帰路、日課の散歩を愉しむソクラテスと出会い、早速披露する。「人は自分を恋する者ではなく、恋さない者をこそ恋するべし」との主題で書かれた文章だが、これを聴いたソクラテスは……。

プラトン初期の対話編。恋(エロース)に対する人間の見方と"神の目"を通じての見方を導入部に、、魂の状態がどう影響するのか、真実と真実らしきこと、表面的な技術と"本質を理解した"技術の違い、単なる文人と哲人の差異等が語られる。
恋と弁論術の根幹は実は同じ=哲学的なものであり、表面的かつ人間的な見方と、神と向き合った自分の目を通じた真の見方との違いが、論理的に述べられる。
魂の大宇宙への旅路と、人間の肉体との関わり等の辺りには、キリスト教以前、古代ギリシャのオルペウス教の影響が垣間見られるそうだ。(宗教そのものの記録は少なく、プラトンら古代人著作の中に現れる中から類推するしかないそうだ。)

ΦΑΙΔΡΟΣ(Phaidros)
パイドロス
著者:プラトン、藤沢令夫(訳)、岩波書店・1967年1月発行
2007年10月14日読了