明治初期、民間人でありながら、独自の方法で文明開化後の日本を近代社会へと導いた「1万円札の人」、福沢諭吉。高等教育、銀行、新聞社をはじめ、現代の平成日本の礎を築いたと言っても過言ではないだろう。
その著書「福翁自伝」を中心に、彼の精神力とポリシーを読み解き、我々の人生に生かしてくれるのが、本書だ。

「独立の章」と「修行の章」では……
・「世間に無頓着」でも「世界の情勢」には無頓着であってはならず、時代の動きをイメージして行動を起こすべし。
・多忙な日常から経験知だけを積み上げ、ネガティブなストレスはキッパリと捨て去る、余裕を確保することで、精神的な病から遠ざかることができる。
・悩むことに時間をかけるのは無駄。それよりも読書と勉強で理解力を深め、経験値を増やせば、思考を複雑化できる。
・独立の気力が無ければ人を頼り、媚びへつらう。そのような依存心は払拭し、自ら率先して事を成すべし。
これらの気質を保持して実践してきたのが、戦後日本を牽引した本田宗一郎、松下幸之助などの優れた経営者であり、現代のIT長者、優れたスポーツ選手にも通じるところがあると著者はいう。
また、読書についても、人間的魅力をつくる上で極めて重要とする。ネット時代における読書の有効性も解き明かされる。

「出世の章」と「事業の章」では、より実践的な教えが開陳される。
・「才能が重要ではない。決断を積み重ね、現実を切り開いてゆくことが大事」で、その積み重ねの中で決断スピードもアップする。
福沢諭吉が留意していたのは「リスクには敏感でいながら細かなことには動じない強靱さ」か。
なるほどなぁ。
(福沢諭吉のスゴサがわかったような気がした。丸善の創設者でもあったのか……)

最後に、パブリック意識と「ミッション」の考え方には共感した。内容は割愛するが、これは会社組織についてもそうだし、個人についても言える。
何度も読み返したい1冊。しばらく机上に置いておこう。

座右の諭吉 才能より決断
著者:齋藤孝、光文社・2004年11月発行
2007年9月25日読了