日本で"市民"と言えば、地方自治体の行政単位である市役所が所掌するところの住民を指すのが一般的であり、欧米諸国と比べて"独立した個人"としての概念は低い。また、マスコミの報じる"市民団体"は、反政府活動家、それも反社会的行為を潜めたイメージさえ帯びているように思う。
グローバル化以前、国際社会のアクターは国家と一部の多国籍企業であり、個人または個人集団としての社会的活動は限られていた。だが、NGO・NPO活動に代表されるように、目的を有する近年の個人集団の存在が年々重みを増し、現在では、公的性格を有する"市民社会"として認知されてきたと思う。
本書は、世界的規模で活動するNGOの活動を紹介し、一般市民が社会運営に参画することの意義を説く。

ユーゴ戦争被害者の遺体を一体ずつ掘り起こし、医学的知識と科学的知見をから身元確認を行う「人権のための医師の会」のメンバーは語る。
「行方不明だった家族の"死亡"が確認されても、生き残った家族は真実を知ることによって、人生を歩み続けられる」

世界地雷除去キャンペーン。故・ダイアナ妃も参加したこの活動も、もう日本では関心の対象から外れたようだが、現在も精力的に活動し続けている。本書では、スリランカとネパールにおける国際NGOの活動が、地元警察・軍関係者・政治家との協議、反政府武装組織との対話等による地道だが綿密に計画された取り組みとして、「地雷廃絶日本キャンペーン」代表である著者自身の体験から語られる。これは圧巻だ。

市民社会活発化の要素としては、一般的にインターネットの普及が挙げられる。著者は、国際航空運賃の低価格化と入国ヴィザの緩和、それに国際機関、財団の資金援助の拡大を理由として挙げる。環境問題への取り組みも、その恩恵を受けているのだろう。
「高い関心を持ち、厳しい目を持つ市民は健全な民主主義に不可欠である」(第四回汎欧州環境閣僚会議の閣僚宣言)

最後は、グローバリゼーションの進化の潮流について。
新自由主義者=市場原理信奉者の推し進める経済政策は、潜在的に一般市民の生活に被害を及ぼす可能性がある。国内政治で為政者を選ぶように、経済面での選択肢が無いことに市民社会が不満を抱きつつあるとされる。
「反グローバリゼーションが提起している問題は、市民生活を直撃する可能性のあるテーマについて、市民の意見が反映されるような民主的決定過程が欠如していることだろう」
グローバリゼーションの長所と短所を見極め、その恩恵を多くの人が享受できる市場経済と、プロセスへの参加が保証された政治体制が求められる、か。なるほどなぁ。

<新世界事情> 地球市民社会の最前線 NGO・NPOへの招待
著者:目加田説子、岩波書店・2004年11月発行
2007年11月22日読了