製紙法を取得したことにより、コーランと科学技術が普及・発展する様子が俯瞰される。また、製糖法の技術がイスラム教徒の手によって中国、ウズベキスタン、イラク、エジプト、西アフリカを経てヨーロッパへ伝達される様子は、キリスト教徒による東インド諸国のプランテーション化、紅茶文化の発展と合わせて興味深い。カフワ=コーヒーを飲む習慣もイスラムの地、アラビア半島のモハ(モカ)から伝搬し、現代社会まで続いている、か。

9世紀頃のイスラーム世界。アラビア語と紙、それに0の概念を含むアラビア数字が、ヨーロッパに先行して科学技術を発展させる原動力となったこと、濃い黒インクで書かれた美しいアラビア文字は、より多く神の心にかなうものとされ、この精神がアラビア書道を生み、クーフィー体などの様々な書体が生まれたこと等、興味深い内容が多い一冊だった。

中世イスラム商人の栄華も、スペイン・ポルトガルによるインド航路の発見、すなわち大航海時代の始まりによって淘汰されてゆく。もちろん、彼らは手をこまねいているわけではなく、工夫を凝らして挽回を試みるが、特産品である砂糖と故障の専売化=国策によって急速に廃れてゆく様はわびしいものがある。大商人、類い希なる大金持ちといえども、君主の舌先ひとつで運命を翻弄されるのか……。

世界史リブレット17
イスラームの生活と技術
著者:佐藤次高、山川出版社・1999年1月発行
2008年1月23日読了