前半は近世イスラームの3大帝国、オスマン、サファヴィー、ムガールに生きたユダヤ人、アルメニア人の姿を描く。
ヨーロッパでは迫害の対象として辛酸を舐めた彼らも、イスラーム圏でも同様に少数民族であった。しかし、民族の離散をネットワークとして活かし、一定の地位を築き上げた。
しかし国民国家の時代に移り、取り巻く環境が変わると、少数民族であることが仇となり、ゆっくりと没落してゆく。
後半は現代イスラーム圏におけるマイノリティ集団の事例として、チュニジア領ジェルバ島に生きるユダヤ人共同体の生き方と、共存を可能にしたイスラーム的要素、すなわち、コミュニティの多様な関係を保証したシステムのあり方が考察される。
19世紀に入るとオスマン帝国は国民国家トルコへと向かい、その過程で生じた諸民族の意識が、マイノリティ集団に同質化または退去(排除)を迫るまでになる。
今日も終わらないテロ行為の源に、宗教ではなく、異なる民族・社会集団を保護するシステムの崩壊がある。そう思えた。

世界史リブレット53
世界史の中のマイノリティ
著者:田村愛理、山川出版社・1996年12月発行
2008年2月19日読了