一遍の芸術作品を仕上げるため、異常なまでの現実描写へ執着する変わり者の絵師、良秀。
それが地獄絵図となると……。
いまにも火が放たれようとする牛車内に縛られた女は、時の権力者へ奉公に出した愛娘。
あまりの光景に飛び出した一瞬間の親心は、次の瞬間、飽くなき芸術への探求心に閉ざされる。
娘の悶え死ぬ姿を目前に、恍惚とその姿を脳裏に焼き付ける様子は、見る者どもに恐怖を抱かせる。そのなかで只一人、権力者だけが笑みを浮かべている…。
昔読んだ短編を久しぶりに読んでみた。流れるように描く"人の惨さ"は圧巻だった。

地獄変
著者:芥川龍之介、岩波書店・1996年1月発行
[芥川龍之介全集第三巻]所収
2008年3月2日読了