「政府は国民の声に耳を傾けるべきだ」、「国民の声をないがしろにした与党の対応は許し難い」等々、テレビの"ニュースショー"や国会討論等では時折、"国民の声"なるものがキャスターや政治家によって口にされる。
この、言わば"最大公約数"的な漠然としたものは、いっぽうでは"世論"ともされる。

「国民の声」ってのは、いったい誰の声だ?(帯より)

世論、世間、あるいは「みんなの意見」なる漠然とした雰囲気に流されて毎日を送る我々。その正体を追求したのが本書だ。
簡潔に言えば「マスコミに都合の良い意見」が、その時々の「国民の声」になる。そう言うことか。

若狭湾の原子力発電所、沖縄の米軍基地、九州・諫早湾干拓地問題では、マスコミは反対派と賛成派とに分類し、特に「権力に蹂躙される地元住民の意見」なるものをクローズアップする。実際に足を踏み入れた著者によれば、地元住民の意見とは「余所から乗り込んできた活動家の意見」であり、反対派も「裏では賛成」の場合が多い。全員賛成では見返りが得られず、一部の仮面を被った反対派の存在が、地域に莫大な利益を誘導する構図があぶり出される。

「テレビの至上命題は…(略)…CMという四角い看板を茶の間で見せるのが本当の目的なのだから」か、なるほど。

からくり民主主義
著者:高橋秀実、草思社・2002年6月発行
2008年3月4日読了