他人から見ても"絶望"と呼べる状況にわざと身を置き、その恐怖を底まで体験することに何の意義があるのか?

幼少の体験:生後すぐ親から捨てられ、転々と居候先を替えた主人公。最後に預けられた親戚宅では殴る蹴るの暴行を毎日受け続け、最後は死に至る寸前にまで虐待され、山中に埋められた。親のいない、土の中の子供。
施設生活、登校、生きる意味を見いだせない毎日。それが、恐怖を求め続ける人格を育んだ。
後半、命の危機に遭うことにより、求めていたものは恐怖ではなく、その先の「あるもの」をこそ求めてきたことが、主人公によって自覚される。この辺の描写は見事だ。

個人的には、物語の中盤、初めて自分の意志で積み重ねてきたある行為が、外力によって崩れ落ちる場面が印象に残った。

土の中の子供
著者:中村文則、新潮社・2005年7月発行
2008年3月26日読了