大女優、吉永小百合さんのデビュー2作目だ。

主人公、石黒ジュンの親父さんが職人気質で良い。
会社が買収され、クビを言い渡された父。組合活動員が退職金の割り増し、過去の事故の労働災害の認定に向けて動くが、赤の手先に世話されたくないと断る。
「ともかくな、男は引き際が肝心なんだ。済んだことをとやかく言われる筋合いはねえ」
決めたことは頑なに守るが、柔軟性に欠ける典型的なガンコ親父。
家族には大きな顔で接するが、職探しではプライドも何も捨て、卑屈にならざるを得ない。
本人の苦悩と、犠牲を強いられる家族が痛々しい。

成績優秀、しかし経済難から高校進学をあきらめざるを得ないジュン。
友達の家で勉強すると嘘をつき、パチンコ屋のバイトにいそしむ。修学旅行もあきらめかける。すべては、高校入学金を貯めるために。
友人宅へ「勉強を教えに」訪問するジュンは、格差を目の当たりにする。自家用車、豪奢な洋風の家、ステレオ・セット、応接セット付きの勉強部屋、ケーキ・セット……。「勉強ができなくても高校へ行ける生徒には負けたくない」との思いは強くなる。

その友人の父の親切により、ジュンの父は大手工場に再就職できたが、それも束の間。
修学旅行に出発する朝、「FA化された工場なんぞで職人が働けるか」と2週間で工場を辞めた父。力なく自宅を出たジュンは、修学旅行の汽車には乗らず……。

万引きに誘われる小学生の弟。ヤクザものと関わりを持つジュン。
「すくすくと明るくのびよう青少年」の市役所の標語がパロディに見える。

少女の苦悩と成長、独り立ちへの決意がテーマだと思うが、朝鮮人蔑視の問題も隠れたテーマだと思う。
「だけどよ、北鮮と南鮮ってなんで分かれてるんだ? 同じ朝鮮人同士なのによ」
「世界の対立だって。東と西のドイツみたいに」
「じゃあ戦争になるかも、北鮮にいたらヤバイじゃん」
「日本もヤバイだろ?」
「そうだよなぁ、川口だって、水爆でイチコロだしな」
「それなら北鮮にいたほうがいいだろ? どうせ貧乏だし」
「そうだ、いまより貧乏になりようがねぇからな、ワハハ~」
「ワハハ~」
小学生同士の会話がこれだ。

貧しさ、東西冷戦、朝鮮問題。政治的なテーマを内包しつつ、吉永小百合さんの"可憐さ"がすべてを超越し、青春映画の名作が誕生したというわけか。

実は、AERA誌(2008年3月24日号)に掲載されていた東京大学大学院教授・姜尚中さんのコラム「久々に見返した名画、若者への温かい眼差しと、吉永さんの思いに気づく」を読み、この作品を知った。「苦しいとき、若者に差し伸べられた周囲の手。現代日本に失われた、そんな暖かみ」の趣旨が記載されていたが、確かに、そんな暖かみはいまでは少ないと思う。

昭和37年封切、浦山桐郎監督、今村昌平脚本、日活スコープ・モノクロ作品。
もしかして、古い映画ってスゴク面白いかも。