18世紀フランス文学なんて、スタンダールの赤と黒しか記憶にない。
マノン・レスコー。この名前を初めて目にしたのは、篠山城近くの大正ロマン館で買ったメモ帳、竹久夢二が描く「マノン・レスコーの唄」イラストだ。
しばらく買ったことすら忘れていたが、2008年8月24日の神戸新聞「豊かな読書 鴻巣友季子さんの一冊 マノン・レスコー」を目にし、急に読みたくなった。幸い、本棚を漁ると出てきたので、アイスコーヒー片手に重い文学全集を開いた。

マノン。このわがままで贅沢を知り尽くし、それでも男を夢中にさせる女!
貴族の息子である主人公はたちまち恋に溺れ、学業も将来も投げ捨て、移り気な女に夢中になる。犯罪に手を染め、友を裏切り、幾度かの投獄も苦にせず、マノンに夢中だ。
警視総監の言葉がすべてを語る。
「ああ、恋よ、恋よ! おまえはついに思慮分別と和解することはないのか?」
情欲に溺れることを望むのか、名誉の感情を選ぶのか。監獄へ迎えに来た父親の嘆きもむなしく響き、主人公はマノンと数回目の逃亡を図る。

囚人としてアメリカへ送られる主人公とマノン。偽装結婚がばれたあとの転落人生。権力=総督の前に人権の尊厳もむなしく、ただ逃亡の日々。
最愛の人を亡くした主人公は、神との対話を通じて精神を保つ。最後に現れるのが、ただ主人公を捜しに危険を冒し、単身アメリカへ渡ってきた友人であり、すべてを超越した友情が物語を締めくくる。救いようのない人生でも、持つべきものは友、か。

HISTOIRE DU CHEVALIER DES GRIEUX ET DE MANON LESCAUT
マノン・レスコー
(シュヴァリエ・デ・グリュとマノン・レスコーの物語)
著者:アベ・プレヴォ、集英社・1990年9月発行
集英社ギャラリー[世界の文学6] フランスⅠ所収
2008年9月14日読了