誰もが安価なビデオカメラ、それもHD画質で映像を記録できるだけでなく、Youtube等のサイトで自分の作品を世界中に披露できる。WEB2.0を満喫中の2008年から見ると、1970年代に巨大ビデオカメラを抱え、両肩には録画装置と制御装置を抱えて活動したビデオジャーナリストは、遠い存在に映ってしまう。
著者はタクシー運転手時代、待遇の改善を求めて労働組合を結成した。ビデオカメラで実態を記録して労働者の力を結集できたことにより、映像の持つ力を確信した。撮影・編集・報道を一人でこなすビデオジャーナリストの先駆けとして、1970年代よりベトナム、ニカラグア、カンボジア、イラクなど、世界中の戦場にビデオカメラを持って乗り込んだ。

その信念は次の言葉に込められている。
「現場を撮影し、それを持ち帰ってアメリカ人に見せるというのは、ジャーナリストとしての義務であるとともに、アメリカ国民としての義務だと考えている」

戦争についての真実が人々に理解されること、特に世界中で戦争を遂行する能力を備えたアメリカ人にとって重要だ、と著者は説く。
マスコミで報道される「大本営発表」では真実は見えず、当局の隠したがる一面をさらけ出してこそ、軍を送る国民の知る権利が保障される。そう言うことか。

アフガニスタンで続く、テロとの戦い。厳格なイスラム原理主義から解放され、女性たちは教育の機会と外出の自由を取り戻し、映画、読書等の娯楽も解禁された。アメリカによる解放。「これは良い戦争だ」そう思い現地へ赴いた著者は、米軍の爆撃によって全滅の憂き目にあった小さな村-同行者のアフガニスタン系アメリカ人の親戚一同の避難先-の惨状を目の当たりにする。
カンダハルだけでなく、小さな子供や女性ばかりが住む疎開先の小さな村でさえ「疑わしき」は攻撃の対象となる。
「何が行われたのかを、アメリカ人は知らなければならない」
この思いは、われわれグローバル化された世界に住む者にとっても同じである。イラク戦争では通信社、新聞社から選抜された従軍記者が同行し、それなりの報道が行われたが、これは検閲済みのクリーンな報道だ。
たとえばジェシカ・リンチ上等兵の嘘だらけの英雄物語、アブグレイブ捕虜収容所で行われた虐待と人権侵害など、人間性の本質が問われる物事は、これら従軍記者の口から聞かれることはない。

伏せられた事実、公の報道に含まれない物事を知ることで、われわれ一般人の意識レベルも進歩できることを、本書を読んで再認識した。

NHK 未来への提言
ジョン・アルパート 戦争の真実を映し出す
著者:ジョン・アルパート、青木冨貴子、NHK出版・2005年5月発行
2008年10月31日読了