2001年9月11日。あの世界貿易センタービルから、わずか数ブロックしか離れていない自宅の寝室で著者は叩き起こされた。ジャンボ機の衝突した轟音は、ニューヨークの光景を、アメリカ人の意識を、世界情勢を一変させてしまった。
本書は、その後の1週間のニューヨークの動きを観察した詳細なレポートだ。自宅から避難しないと腹をくくり、毎日、現場へ足を運ぶ。一晩たっても燃え続け、巨大な煙を上げるビルの残骸。収まらない粉塵の中、鉄とコンクリートと、人の焼ける臭いを呼吸する。次なるテロ=生物兵器による攻撃の予感に脅えながらも、救急作業に全力を挙げる救急隊員とニューヨーク市民の姿。

著者は問う。
テロの予兆はあった。何故、防ぐことができなかったのか。
1993年のテロ事件の際、逮捕された容疑者は「資金と爆薬が足りなかった」と語った。この失敗を教訓に、アルカイダは入念な準備と資金の準備を行ってきた。1996年から2000年かけて中東の米軍基地、海軍艦艇、アフリカの大使館が攻撃された。これだけの予行演習の後、アメリカの中枢への攻撃が実行に移されたのだ。

ただ1機、おそらくはホワイトハウスを目標とした機体がペンシルバニアに墜落した。3人もしくはそれ以上の勇気ある乗客がテロリストと闘ったことが明らかになった。以前、テレビでもやっていたが、感動的な逸話だ。ただ運命に身を委ねるよりも、闘う勇気。見習いたいものだ。

アラブ系アメリカ人への人種迫害。イスラム原理主義や急進主義から離れ、自由の国にやってきたはずなのに、どうしてこのような目に遭うのか。以前、ロサンゼルスで暴動が発生した際、韓国系の店が集中的に襲撃された。暴力の捌け口はマイノリティになるのか。オバマ氏が大統領に就任することで、このあたりは変わるのであろうか。

目撃 アメリカ崩壊
著者:青木冨貴子、文春新書・2001年11月発行
2008年7月28日読了