本書は19世紀後半から20世紀初頭にかけてのイギリスの労働者クラブを題材に、都市部における新しい共同体の形成とその文化(アソシエイション文化)を論じる。

産業革命が引き起こした工業化は、急速な都市の発達を即した。従来の鉄道網に加え、都市部での地下鉄の発達は、上流・中流階級の住居の郊外への移転を即した。代わりに都市住民の主役に躍り出たのが工場労働者とその家族だ。

給与所得と余暇(9時間労働と土曜半ドン)の増大が、労働者の週末を充実させる。会費を支払えばメンバーになれるクラブは、村落社会から離れ孤独になりがちな労働者のアイデンティティー形成の場となった。

当初、上流・中流階級の篤志によって「労働者の正しい教化」を目的に発足したクラブも、アルコール提供を皮切りに労働者自身による自主経営が可能となり、夜と週末の娯楽を主体に大規模化していった。

都市社会の住民として、好きなクラブイヴェントに参加できる自由。これは農村社会での「村の掟」や「全員参加」に縛られることの大きな違いだ。また、個人ではなしえない地方自治への参加も、クラブとその動員力を通じて可能になった。

伝統的な上流・中流階級を基盤にしたトーリー(保守党)とホイッグ(自由党)の政治世界に、19世紀後半以降の度重なる選挙法の改正により、労働党の発足と都市労働者の国政への参画を可能にした。

グローバリズム。この聞こえの良い言葉が氾濫する。実態が分からなくてもの分かったふりをすれば、時代に流されなくて済む。そして、新自由主義の蔓延による地域社会と人々の紐帯に緩みが生じ、その間隙を衝いて浸透するナショナリズムが、意図的なマスコミ報道によって徐々にわれわれの生活に馴染んでくる。
こんな構図を想像してしまった。

世界史リブレット119
近代都市とアソシエイション
著者:小関隆、山川出版社・2008年12月発行
2009年1月29日読了