もはや、日々マスコミで報じられる暗い経済ニュースは食傷気味であるし、米国発の金融危機を頭で理解できても、自分の身の回りに影響が及ばないと実感できないものだ。
でも、正視しなくてはならない。

本書は、長い長い不況の入り口に立ち、これから数年の間に起こり得る"経済津波"と日本への影響が検証される。
政府規制の及ばない影の銀行システム。その構造と崩壊、これまでの経済不況との決定的な差異とインパクト、無責任に米国政府のグローバル化要求に従い続けた結果、無惨に崩壊した日本の雇用と社会保障、それに"倫理"。

米国債を買い支え、影から米国消費社会を支えているのは80~90年代と異なり、中国、ロシア、南米と言った決して親米ではない国という事実。ドル暴落のリスクは高まる一方か。

著者は説く。これから本格化するであろう日本社会の崩壊(経済ではなく社会)に備えよ、と。資産デフレと資源インフレが同時進行し、それがもたらす"惨状"は知りたくもない未来図だ。

薄いが中身の濃い1冊だ。細かな経済指標については一定の知識がないと理解しづらいが、あえて精緻なデータを掲げたのは、この金融市場の崩壊がもたらず影響の巨大さを示す意図なのかもしれない。

岩波ブックレットNo.740
世界金融危機
著者:金子勝、アンドリュー・デウィット、岩波書店・2008年10月発行
2009年2月5日読了