膠着した紛争の出口を求めるのは容易ではない。
どこまでも正義を追求するのか。それとも、平和を求めるのか。

戦争被害を被った者から見て、妥協による平和はありえないし、戦争犯罪人の"恩赦"などとんでもないことだ。一方で、この先、数十年の紛争と混乱に耐えられるほど、人間社会は盤石ではない。

破綻国家に陥る恐怖が、大国主導による和平を受け入れる土壌を育む。平和と新生国家の演出。そこでは、数十人を虐殺した戦争犯罪人でさえ許されるという、とんでもない代償がバーターされる。いったい、戦争被害者の人権はどうするのか。

戦後60年。形骸化した憲法九条だが、しかし、その前文と九条こそ、現代日本人の精神の骨格となった。諸外国が見た「日本人の姿」も、英米のように武力を振りかざすことのない、中立した、信頼できる経済大国の人々、と映る。

シエラレオネ、東ティモール、アフガニスタンで紛争処理、武装解除を指揮した著者は、この「美しい誤解」こそ、日本の資産であり、外交上の最大の武器であると説く。

焦燥となっているアフガニスタン。出口の見えない対テロ戦争。2003年には考えられもしなかった「タリバンとの和解」が真剣に議論されている。それも和解の是非ではなく、いつ実行に移すか、が議論の中心だという。中立イメージを持つ日本のイニシアチブ、か。なるほど、イラクへの自衛隊派遣より、よほど世のためになりそうだ。

自衛隊の国際貢献は憲法九条で
国連平和維持軍を統括した男の結論
著者:伊勢崎賢治、かもがわ出版・2008年3月発行
2009年8月29日読了