1665年にロンドンで猛威を振るったペストを題材に、ロビンソン・クルーソーの作者によって1722年に発表された作品だ。

「オランダでペストが流行っているらしい」との噂話から時を置かず、ウェストミンスターやシティー内部で急激に拡大した、黒死病=ペストの災い。
原因も感染経路もわからず、もちろん対策手段もない。感染したら、神に祈るか、あきらめるか。絶望的な二者選択の運命。

最初は丁重に葬られていたペストの犠牲者だが、その数が急増すると、貴族も貧乏人も身分も関係なく、巨大な墓穴に裸体で放り投げられる有様。それでも墓地は不足し、ロンドンの街は一変する。

それでも、知恵を絞って街を抜け、野原の集団生活で命を長らえた者もいれば、水上生活に耐久した者もいる。
そして真に賞賛されるべきは、死臭漂うロンドンに居残り、懸命に病人の看病と死者の埋葬に従事する者と、逃げ出さずに使命を全うした医療関係者と、市長をはじめとする行政担当者たちだろう。彼らにも多くの被害者が出た。
それでも、命をかけて職務を成し遂げたのは、誇り、に支えられたからに他ならない。

当時の大都市、ロンドンの人口は50万人。死者、実に8万人。
戦慄するべき記録である。当時まだ一般的でなかった新聞記事の作風にしたのも、手法ではある。
しかし、文学作品としては面白みを欠くのではないだろうか。カミュの「ペスト」には、闘う医師と周囲の人物の敢闘と"感動"を余すことなく満ちあふれているだけに、その差が目立ってしまう。

A JOURNAL OF THE PLAGUE YEAR
地球人ライブラリー
ロンドン・ペストの恐怖
著者:ダニエル・デフォー、栗本慎一郎(訳)、小学館・1994年7月発行
2009年11月9日読了