911同時多発テロ以降、いわゆる「非対称型戦争」に関する記事が雨後の竹の子のように表れたが、これは当該事件の発生前に発表された論文だ。
研究所レベルで警鐘が鳴らされても一般政治レベルで取り上げられる可能性は少ない。その典型的な事例だろう。
ただ、当時の風潮に倣って、北朝鮮に照準が当てられているため、超大国対アルカイダの記述はない。

1986年の米軍によるリビア空爆、1998年の米英軍によるイラク空爆(湾岸戦争以上の爆薬が投入された)がLICの事例として取り上げられ、近代的な軍事力が必ずしも有効に機能しないことが論じられる。
そしてLICの発明者は毛沢東であり「人民の軍隊」、「拠点の自由な移動」、ゲリラ戦術に的を絞った「遊撃軍」がその特徴とされる。1930年代に日本軍を苦しめた中国共産党軍(八路軍)の行動を、当時の参謀本部の記録や将校の回想を通じて改めて見ると、まさにベトナム戦争や、今日のアフガニスタン戦争を先取りした戦術だったことがわかる。
泥沼化した日中戦争の解決の見通しの立たないまま、真珠湾への道を選択したことは、自己の能力を過信した現れだ。
2010年現在の米国がイラク問題に早々に見切りを付け、アフガニスタンとイエメンに注力することを選択したのは、いずれ3桁以上の犠牲者を出すにしても、戦略的に正解かも知れない。

LICに関連して、ネット(1998年にはGoogleはなかったんだなぁ!)やマスコミの活用、迫害されている住民の利用等、国際テロリストに極めて有利な環境が整いつつあり、重装備の正規軍では対処し得なくなるだろうことが述べられる。

その帰結が、あの、911同時多発テロ、か。

「戦争で勝つのは、正しい者ではなく、一番強い者である」
(Hans Kelsen)
国家の上位組織は無いこと、国際テロリストを包囲する統合された国際組織に欠ける現況では、テロは増加する一方だな。さて、どうやって身を護るかな?

21世紀型戦争 LIC (低強度型紛争) とは何か
著者:潮匡人
文藝春秋社刊「諸君! 1999年3月号」所収
2010年1月5日読了