風邪なので休暇。夕方に快復したので、録り溜めたTV番組をチェックする。
"ロンドン"と"漱石"でピンときて、録画しておいたNHKの番組を見た。
(放映日は2009年8月13日。)

イギリス支店に転勤した商社勤めの若い日本人女性が「引きこもり」になり、支店長(日本人)に当時の漱石の行動を調査するよう言われ、その足跡を追う話。

当時の文部省の命令により、単身でロンドンに乗り込んだ夏目金之助。
ときは1901年のヴィクトリア時代。フランスをも寄せ付けず、世界覇権をものにしていた大英帝国の全盛期だ。
「どこかアジアの片隅から来た小さな人種」は、当然、イギリス人から理解されるはずもない。背が小さく黄色い自分の姿はコンプレックスとなる。留学期間は2年だが、下宿を転々とし、英国人の先生のところへも顔も出さなくなり、やがてひきこもる。
日記もパタリと書かなくなる。妻、鏡子への手紙の中で「頭がおかしくなりそう」と訴える様は痛切だ。

この小さな下宿の部屋で、これまでの自分は、浮き草のように文学を彷徨うだけの存在であったことに漱石は気付く。英文学の狭い範囲の蔵書を一時封印し、それまでひもとくことの無かった分野の本を読み出すようになる、
そして、自己本位に立ち、著書その他の手段による文学作品の執筆(公開)を自分の生涯の事業とすることを決意する。

ロンドン留学。そこでの引きこもり期間=悩み抜くだけの時間と決意が、偉大な夏目漱石を育んだというのだから、本当、何が起こるか分からない。
「つまり、ヨーロッパのものまねをするのではなく、日本がすごいと思うのでもなく、自分自身が考えたことをかたちにするってことか」
出演女優のつぶやき。結局、これが結論ってことか。

齋藤孝氏、姜尚中氏らの留学時代の経験談も挟み込まれ、若い自分の苦悩が貴重な経験であることを示唆している、

近代の本質を日本人として最初に理解したのが漱石。(姜尚中氏の言葉)
100年後の現在でも読み継がれるのは、西洋近代と日本の関わりの原点が漱石の体験と作品に内包されているから。そう言うことか。