友人の弁護士と一緒にニューヨークを訪問したランベス侯爵は、若き英国貴族だ。その出自と美貌にボストン育ちの20歳のアメリカ娘、ベッシー・オールデンは興味を抱く。
伝統ある英国の「歴史ある物事」や「絵画的な出来事」に対する夢想は刺激を受ける。貴族院議員であること、ロンドン郊外の領地と居城、やがては公爵となる身分であること……。憧れは恋心に昇華される。

その姉、ウェストゲート婦人は二人を見守りつつも、どちらかと言えば否定的だ。物語後半に二人が渡欧しても、連絡をとろうとはしない。

憧れのロンドンを訪問したベッシーの、好奇心はさらに肥大する。だがランベスの母親=公爵夫人が登場すると、ベッシーは文化の大きな乖離を肌で感じるようになる。

ロンドン上流階級のイギリス人と、米北東部に住む上流アメリカ人。源流も異なる両者の文化の違いが細かな摩擦を育み、若い男女の恋はすれ違いとなり……。

ヴィクトリア時代の中興期、1879年の作品だ。森薫氏の「英國戀物語 エマ」だと、ちょうどウィリアム・ジョーンズの父親の時代に当たるな。

AN INTERNATIONAL EPISODE
国際エピソード
著者:ヘンリ・ジェイムズ、上田勤(訳)、岩波書店・1956年3月発行
2010年5月20日読了