ベル・エポック。近代文明社会が本格的に幕を開け、西欧文化が爛熟した時代。アール・ヌーヴォーの華が満開となり、絵画芸術、哲学、文学の世界でも革新が起こり、21世紀にも強い影響を残す、まさに現代文化の源泉だ。

本書では、電信・電話技術の急峻な発達と実用化、内燃機関と石油化学工業等の発展に触発され、西洋人個々の生活と意識、社会集団を近代化に適応させてゆく様がわかりやすく著される。

日本でも"文明開化"以降、1930年代まで連綿と続く文明・文化のオリジナルでもあり、現代の目から見ても"良い時代"だったと感慨深い。

一方で、帝国意識の増大と社会ダーウィニズムの正当化など、19世紀後半から第一次世界大戦にかけての西欧文明主観主義は、まるで米国で急成長した"ティーパーティー"と、その独りよがりな愚劣さを想起させる。彼等がアジア・アフリカ諸国を植民地化し、収奪し、荒らすだけ荒らして去った傷痕は、21世紀のいまも深いままだ。金融・資源面での帝国主義は残ったままだし、西欧支配の構図は当面、変わらないか。

世界史リブレット46
世紀末とベル・エポックの文化
著者:福井憲彦、山川出版社・1999年11月発行
2007年3月18日読了、2010年11月15日再読了