世紀末芸術を図版で紹介するシリーズ本。本書では著名なポスター画家、ミュシャの芸術性と同時代のパリに視点が置かれる。

ロンドンに始まってブリュッセル、ナンシー、パリに広まったアール・ヌーヴォー。それは1890年代を代表する芸術様式であり、建築材料としての"鉄"と深い関係にあった。自在曲線で表現される"文明"はベル・エポックの象徴でもあったろう。

チェコからミュンヘンを経てパリへ出てきた青年、ミュシャは印刷工房で働く。運命の一夜。サラ・ベルナールの演劇ポスター"Gismonda"を制作したことがミュシャを一躍スターの座に押し上げる。石版印刷技術の確立と大衆向け商品の消費の増大が、ポスター芸術の振興を後押しした。

"ジャポニスム"が印象派絵画やロートレックのポスターに影響を与えただけでなく、工芸品、日用品へも新たな技法をもたらしたことは興味深い。
浮世絵にも興味が沸いてきたぞ。

世紀末のモード。装飾に凝りすぎたオートクチュールの全盛期は過ぎ去り、"お針子"の作業着だったブラウスとスカートが、20世紀の女性の服装の主流となるとは、面白い。

1900年のパリ万博は電気による"モダン・ライフ"を前面に打ち出した。大理石とブロンズに代わり、鉄とガラスが建築の主役に躍り出る。科学技術と芸術の日常への浸透。生活が、そして人生が変わる予感。躍動への期待。
そう言えば当時の何かのポスターで、すでに自動販売機が登場していたことを思い出した。

今度パリに出向いたときは、19世紀末の繁華街=ムーラン・ド・ギャレットやムーラン・ルージュのあるモンマントルや、ルネッサンス座のあった界隈を歩いてみよう。

アール・ヌーヴォーの世界1 花園の香り
ミュシャとパリ
学研・1987年6月発行
2010年11月21日読了