ニューヨークやワシントンではない、進歩から取り残されたような現代アメリカの架空の田舎町、フランコーニア。この町には退屈な日常しかない。かつてのアメリカの夢は失われ、モラルの崩壊した、生と死の狭間で平凡な愛憎劇が今日も繰り広げられる。

両親の離婚と父親の再婚、母親の乳ガン、エリートコースから転落して麻薬で自滅した兄。親しかった祖母の死。高二で妊娠して退学した親友。真実の愛のハズだった初恋にも破れた高三の夏。これでもか、とたたみかけるような事態を10代のグレーテルを襲う。彼女は耐え抜き、閉塞感に覆われた故郷を抜け、ニューヨーク、ロサンゼルスへと羽ばたき、自立した女性の道を突き進む。

高二で妊娠、そして結婚を選んだジル。夫と三人の子どもに囲まれ故郷に根を生やし、今日も平凡な日常を生きる。

グレーテルとジルの相互の羨み。決して表面化しないそれは、自分にないものへの憧れを長年の友に今日も見い出し、胸にしまい込まれる感情だ。

「グレーテルはこれが人生の決定的な瞬間であることを意識した。ここにとどまるか、逃げ出すか。自分の一番求めているものに背を向けて、そのあとずっと後悔しながら生きる、わたしはそういう人間だろうか」(124頁)

本作のキーワードは"運命"だ。運命=環境と言い替えても良いだろう。数年後のジル会話に登場する、自殺した二人の少女は運命を甘受した結果としての象徴であり、グレーテルは運命に抗って人生を切り開いた新時代の女性の象徴。著者のメッセージは連作短編を経て最終話に凝縮されている。

LOCAL GIRLS
ローカル・ガールズ
著者:アリス・ホフマン、北條文緒(訳)、みすず書房・2010年8月発行
2010年11月26日読了