冒頭から衝撃を受けた。半裸の民族衣装を纏い、右手に長槍、左手に携帯電話を持ち、ケニアの平原を駆ける"ITマサイ"。
羊の放牧中にライオンに遭遇し、急遽仲間を呼んだことで被害を出さなくて済んだなど、実にインフラ完備の都市部よりも有効活用されている。
オンラインの発達していない東アフリカでは、携帯電話網が銀行決済の主要な役割をも果たす。、ケニア国民4千万人、携帯の普及率は実に50%! プリペイド式の安価なシステムを構築したことが成功の秘訣といえる。
テクノロジーはライフスライルを変革する。"携帯メールでつながる"ことから、旦那の都市部への単身出稼ぎも急造し、家族の絆を大切にする伝統文化もグローバル化の波に飲み込まれた。

アパルトヘイトの終焉した南アフリカ、経済の破綻した"独裁国家"ジンバブエ、内戦の傷痕の生々しいルワンダ、ゴールドラッシュに沸くタンザニア。それぞれが独自のやり方で後進国を脱しようとする姿にはすさまじいモノがある。

南アフリカの"ジンバブエ移民活用政策"は一時的に効果を出すだろうが、貧しい自国民の放置は火種となり、問題を起こすに違いない。日本も移民の受け入れは制限しなければならない。

アフリカは金銀銅、ダイヤモンド、タンタル等の貴重資源の宝庫でもある。
かつてはセシル・ローズのデビアス社が牛耳っていた市場も、21世紀に入ると俄然、中国の存在感が増した。無尽蔵とも言える国の資金を縦横に活用し、タンザニア、ボツワナの鉱山を次々に開発する中国企業。世界銀行に頼る必要のないことから、受け入れ国にとって歓迎される構図がそこにあり、従来の欧米企業は苦戦を強いられる。"世界ビジネスルール"に照会しての正当性はともかく、がむしゃらに世界中の資源の確保に走る中国人の姿は、ある意味、不気味に映る。
しかし、アフリカで働く中国人の環境は過酷だ。有名大学を卒業しても就職率は50%! やむを得ずエチオピアやザンビアで働くしかない若いエリート中国人にとって、国家の存在こそ縁(よすが)とも言えるのだろう。
悔しいが、日本は完全に負けている。政治は機能していないし。

アフリカ 資本主義最後のフロンティア
著者:「NHKスペシャル」取材班、新潮社・2011年2月発行
2011年7月7日読了