ベル・エポックを席巻したアール・ヌーヴォーから一転し、1920年代からアール・デコ建築様式が世界の主流となる。幾何学的な直線と曲線、その繰り返しが生むリズムと人工的な素材感を特徴とするスタイルは、たしかに移動のスピード化(飛行機)、大規模化(百貨店)、大衆化など新しい時代の訪れを予感させ、世界大戦後のグローバリズム時代にマッチしたのだろう。

本書は、主に関東大震災後に東京に建築されて現存する、日本のアール・デコ・スタイルを代表する建築物の外観と内装の"ツボ"を紹介する。

山の上ホテル、学士会館、聖路加国際病院礼拝堂、伊勢丹本館など、なるほど、どれも一見の価値がある。
旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)の内部デザインなど、21世紀の只中でも通用するのではないだろうか。

老朽化により、あるいは耐震性などの理由により、当時の暖かみある面影を遺す建築物は取り壊される運命にある。現存するうちに鑑賞しておかねば。

アール・デコの建築 NHK美の壺
編者:NHK「美の壺」制作班、NHK出版・2008年1月発行
2011年8月15日読了