装画と相まって純日本文学の香りを楽しめた。
小物(煙草盆、ペットボトル等)により、物語の年代を明らかにさせる手法が上手い。
時代に左右されない文学かくあるべし。

「放生」
タイトル装画と冒頭の文章の相性が抜群。本書中、最も気に入ったページとなった。
柱時計の"刻"に追われ、煙草に逃げ、決意して文机に向かうも、また散策に逃げてしまう作家の姿。わかるなぁ。

「岬」
港町の遊覧船から吊り橋のある岬を巡るひとりの女。
数日間港町に留まり、失恋の痛みを癒す旅であること、そして自殺志願の相貌であることを、他人の口調から自覚する。
わざわざ岸壁の窪みにまで出向いたのは、そこにいたはずの新しい男性を求めてではなかったか。

他に「摺墨」「掛軸」「裏白」「瓦経」を収録。

瓦経(かわらきょう) 岩波書店Coffee Books
著者:日和聡子、装画:金井田英津子、岩波書店・2009年3月発行
2011年9月7日読了