諫早を根拠地とし、戦後の昭和を語る芥川賞作家の随筆集。明石のジュンク堂で偶然手に取り、その端麗な文章に惹かれて購入した。

受験の失敗、古書店と映画館に通い詰める日々、京都および東京の漲る活気に充実した若き時代。
そして故郷愛。

「きれぎれの断片を寄せ集めて過去のある時間を再構成してみること。……ものを書くということは程度の差こそあれすべて過去の復元である」「愛着とは……私の失ったもの全部ということになる。町、少年時代、家庭、友人たち。生きるということはこれらのものを絶えず失いつづけることのように思われてならない」(一枚の写真から)

小説はその土地に根をおろし、一朝一夕では感じられない「その土地の歴史と風土と人間が溶けあった精粋」と合体し、その加護により生み出される。(鳥・干潟・河口)
僕の場合は、JR朝霧駅のホームから見下ろす朝の光にまばゆい明石海峡の光景が、源泉になるんだろうな。

≪大人の本棚≫
夕暮れの緑の光 野呂邦暢随筆選
著者:野呂邦暢、編者:岡崎武志、みすず書房・2010年5月発行
2011年9月24日読了