1920年代のヨーロッパおよびアメリカ旅行の様相を、小説、紀行文から紹介する。

第一次世界大戦が世界の姿を変えた。初めて旧大陸の地を踏んだ若い米兵は、戦後は恋と文化の香りを求める観光客となり、大挙して欧州を訪れる。アメリカ式と異なるパリやロンドンの伝統あるホテルの"マナー"に、とまどいつつ楽しむ姿が面白い。

リッツ、サヴォイなどの豪華ホテルにはリフト(エレベータ)とレストランが整備され、貴族の館に変わるパーティ会場として毎夜の賑わいを見せる。
オリエント急行に代表される豪華鉄道には、レストランに匹敵する食堂車が備えられる。1900年のフランスにわずか3,500台しかなかった自動車も、1920年代のモーターブームにより、スポーツ・カーで縦横無尽に駆ける若者が現れる。
欧州各地とアメリカ、アジアを結ぶ大洋航路船には中間層だけでなく、従来、旅行と無縁だった大衆の群れが見られるようになる。旅客機も営業を始めた。

新しい観光地、スイス、地中海、エジプト、北欧へフランス人やイギリス人が旅立つ。

従来は考えられなかった、"女性のひとり旅"が一般化する。新たなロマンスも生まれる。

サマセット・モームの言葉が気に入った。
「私は一つの場所から他の場所へと動くのが好きなので旅行し、旅行が与えてくれる自由感を楽しみ、…未知のものを私は愛好するのである。…」(p109)

本書で紹介された作品は絶版されたものが多いが、気長に探してみようと思う。

1920年代旅行記
著者:海野弘、冬樹社・1984年8月発行
2011年11月4日読了