"明治への憧れ"と戦前昭和の見直しが数年前に流行った。現代と対比しての国家論を巡り様々な主張・議論が飛び交ったが、結局どうなったんだろう。
著者は江戸から戦前日本と、戦後日本の断絶こそが、現代日本の凋落を招いた要因であり、教養の変節がその背景にあると説く。

西郷隆盛。江戸無血開場を実現し、日本の近代化を導き、繁栄の礎を築いた第一人者だ。
恥ずかしながら、彼は武将であるだけでなく、道を究めた漢学者であったことを本書で知った。その鹿児島時代の勤勉刻苦の様相には驚かされる。

他に本書で取り上げられる勝海舟、福沢諭吉、陸奥宗光、安岡正篤も、現代では考えられない教養と実績の持ち主だ。そのルーツは江戸260年の平和が培った教養主義であり、旧制高校につながる。

「国家が存亡の危機に立つようなときに、国家利益に代わるような価値観とはなりえない」(p216)として、昨今の"地球市民"、"地球環境が云々"のきれい事が"平和な時代のあだ花"であると論破する。その通りだろう。
「日本民族を国際競争のなかで生き延びさせるシステム」(p212)の存在しない現在、思えば1990年代初頭の自民党総裁まで、エリート主義の良い点が日本政治を牽引してきたとわかる。

旧制高等学校に代表される充実した教養。均質的な義務教育とその延長線上の高等公教育のみ受けてきた僕としては憧れるな。

教養のすすめ 明治の知の巨人に学ぶ
著者:岡崎久彦、青春出版社・2005年7月発行
2011年11月7日読了