"昭和モダン"の表記に釣られて、六甲アイランドは小磯記念美術館に出向いてきた。(2012年1月9日)

1936年に「反アカデミックの芸術精神」を掲げて結成された新制作協会と、その展覧会に賛助出品し続けた大御所、藤島武二の作品が展示されていた。

藤島武二「山上の日乃出(碓氷峠)」(1934年)等も良いが、やはり人物画に惹かれるな。
■小磯良平「化粧」(1936年)
全裸になって簡易鏡台に向かう若い女性が背中越しに微笑む。シュミーズもワンピースも市松模様の床に脱ぎ捨て、カーテンを開けたガラス窓からは、鎧戸を通して朝日が部屋に差し込む。スリッパではなくハイヒールを履いた妖艶な姿は、しかし美しい。

■伊勢正義「キャバレー」(1936年)
斜め上からの俯瞰。アコーディオン弾きの躍動感。店内に響き渡るダンス音楽とホステスの囁きが画面から溢れそうだ。
ダンスを踊るペアのうち、青い水玉ワンピースの女は、別のテーブルで噛み煙草を吹かす男を視線に捉えて離さない。このドラマ性に惹かれた。

■内田巌「風」(1946年)
戦後の世相を表す曇り空の下、左方を向く少女に向かい風が吹き付ける。まなこを見開き、まばたきひとつせず、新しい時代を前のめりに歩め!
戦後の作品群から唯一、この作品が気に入った。凜とした表情が実に良い。

"反アカデミック"の芸術精神と謳いつつ、アジア・太平洋戦争の遂行には新制作協会も積極的に協力したようで、1942年第7回展のスローガンは「大東亜建設に捧ぐ」ときた。国策に巻かれ、戦後は掌を返すように平和主義に転じたってわけか。興醒めだな。

小磯良平のポストカードを購入したぞ。
Dscn1955

神戸市立小磯記念美術館
http://www.city.kobe.lg.jp/koisomuseum/