地球の水は誰のものか。
印象的なプロローグ。本編でもあらためて登場するプロモーションビデオの内容は、エンターテインメントで済ますには重すぎる本書のテーマを暗示している。

巨大商社に勤める入社4年目の藪内は、海外入札の失敗の責任を負わされる形で、怪しげな関連商社への出向を命じられる。実に個性的な社長と社員にとまどいながらも、精密機械製造会社のための工場用地確保に奔走する藪内。有望な地下水を有する酒造メーカーの買収劇は社長の辣腕によって鮮やかな成功を見せつつあったが、思わぬところから妨害工作が入る。
物語は水道事業民営化の問題点を示唆しつつ、巨大な利権を巡っての日本の巨大商社、スエズ運河建設当時からの実績を重ねる多国籍水道企業、地方役人の思惑を衝突させながら、9年前のある事件へと収斂してゆく。

「仕事に追われ、自分を追い込み、命をすり減らして散っていった父親」(p297)への思いは僕にもわかる。一生涯、忘れることはない。

それにしても、ゴールド・コンサルタント社長の伊比の攻勢の凄まじさは圧倒的だし、ある意味、憧れでもある。そんな彼が額をテーブルに押しつけて頼み事をするシーン(p284)は印象的だが、最終段階で明かされるその背景も感慨深い。

「正義は我らにある。それを忘れるなよ」(p81)
僕も理想を高く持って生きてゆきたい。

BLUE GOLD ブルー・ゴールド
著者:真保裕一、朝日新聞出版・2010年9月発行
2012年3月9日読了