予備知識なしに読み始めた。
群馬県の農村部、"烏天狗"の出没、平家落人伝説、美しき盲目の寡婦。そして、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ。
迷宮入りした忌まわしい事件が、26年の時を経て解明されはじめた。

・人々の慟哭の先には、常にアメリカという巨大な闇が影を落としている(p296)
・人権、人間の尊厳、社会の倫理が崩れ始める音(p347)。
・「そうだ。確かにたいしたことじゃない。人間一人の命の重さなど、国家権力の前には一枚の紙切れにも相当しないのだ。
たいしたことじゃない」(p356)

アメリカの闇、か。ベトナム戦争がらみだから、突然変異か人体実験により生み出されたモンスターなんだろう……。
そんな稚拙な予想など、はるかに超えた感動が、最後に待っていた!

この壮大なスケール感! 久しぶりに読書の喜びを味わえたぞ。

TENGU(てんぐ)
著者:柴田哲孝、祥伝社・2008年3月発行
2012年4月23日読了