アカデミー賞外国語映画賞受賞作。少し前から気になっていたのだが、神戸で上映中であることを知り、さっそく出向いてきた。(2012年5月23日)

イスラーム法廷での審理から物語は始まる。
大学に勤めるインテリ女性が外国移住許可証を取得するも、銀行員の夫にとってアルツハイマー症の老いた父親を一人にできるわけがない。14年連れ添った夫婦の破局への道のり。
どちらも、娘の親権を放棄できるわけがない。
妻は出て行く。介護に雇われた子持ち女性の家族が、もうひとつの軸となる。別の家族の生活に入り込むことの、特に宗教道徳の尊ばれる世界での厳しさよ。

たとえ家族であっても異性の肌を見ることは許されない。コーランに"誓うこと"の重々しさとあいまって、生活に密着したシーア派イスラームの文化に、"失われた東洋の道徳"が垣間見えたような気がした。

子はかすがい、か。両親の離婚を防ぐため努力を惜しまない11歳の娘の姿が痛々しい。
父親を護るためについた嘘。その涙が、彼女を大人に近づけたと信じたい。

登場人物はみな善人なのだ。暴力に満ちた男も、大切な人を護ろうとするその愛情から見れば、まさに善人なのだ。深い愛情を誰に注ぐのか、人生につきまとう問題を突きつける名画だと思う。

・2011年イラン作品、カラー123分
・監督:アスガー・ファルハディ
・出演:レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、他

元町映画館
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映画『別離』公式サイト
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