紳士怪盗ルパンのメディア・デビュー(?)作。『アルセーヌ・ルパン&ルパン三世特集』号のハヤカワミステリマガジン2012年7月号に、1905年創刊の月刊誌ジュ・セ・トゥの初出版が掲載された。これが本邦初訳となるらしい。
解説は住田忠久氏。

ル・アーブルからニューヨークへの定期航路便。一等船室での五日間の旅の平穏はルパン潜入の無電に乱される。鮮やかな犯行の手口。大富豪令嬢に心ときめかせた斜陽の貴族、ダンドレジーの語る物語には、男の視点ではあるが、華がある。
結末には少しあっけなさを感じるが、ホームズものと異なり、ベル・エポック期ならではの浪漫の予感が提示された作品だと思う。

モーリス・ルブランの著した『アルセーヌ・ルパンとは何者か』(1933年11月 ル・プティ・ヴァー誌)と『モーリス・ルブランによるコナン・ドイルへの弔辞』(1930年8月 政治・文学紀要誌)も併せて一読した。特に後者には、人類遺産と言っても良いであろうホームズとワトソンの生みの親と、その物語への深い敬愛が感じられた。

L'Arrestation d' ARSENE LUPIN
初出版 アルセーヌ・ルパンの逮捕
著者:MAURICE LEBLANC、平岡敦(訳)
早川書房刊「ハヤカワミステリマガジン 2012年7月号」所収
2012年6月7日読了