弁護士事務所に勤める34歳の新見。バーで知り合った彼女と親交を重ねるうちに、解決不可能とされた事件のことを知り、深く飲み込まれてゆく。

似たような人生を歩む、似るはずのない他人。
ときに狂気と隣り合わせになりながら、近代人が常に悩まされてきた、見つかることのない人生の意義。すなわち、迷宮からの出口。

後半、彼女によって、事件の真相が一気に語られる部分は安易な気もするが、迷宮を彷徨う自意識の救済策が、日常にこそ存在することを人が発見する物語として、意義深い作品だと思う。

個人的には、加藤さんのたたみかけるような重い言葉(p134)が、新見の人生を穏やかな領域へと差し向ける一助になることと信じたい。

迷宮
著者:中村文則、新潮社・2012年6月発行
2012年8月13日読了