1930年代の日本国民がそうであったように、平和が壊れ始める音にはなかなか気付くことができず、気付けば大衆が等しく犠牲者に転じる厳しい事態が、現在も世界のアチコチで生起しているという現実。紛争が武力衝突にエスカレートする前に当事者間の交渉を通じ、合意に至るプロセスの重要さがわかっているようで、その実現が困難であることは、歴史上あまたの例が示してくれる。

なぜ戦争はなくならないのか。この根源的な問いに海千山千の現場たたき上げの著者は明快に解を返す。貧困を発生させる構造的問題、すなわち先進国の諸組織による収奪と賄賂文化に染まった被援助国の悲惨な連鎖が、いわば需給関係を形成し、今日も犠牲になるのはか弱き庶民である……。帝国主義時代から連綿と続く"人道主義"の正体みたり。だが人権に根ざす人道主義なくしては、最低限の平和すら確保できないジレンマか。(p39,p76)

本書では、北朝鮮による日本人拉致問題、沖縄基地移転問題、日米軍事同盟、壊れるアフガニスタン、憲法九条と自衛隊の現実、軍法の必要性が論じられる。その総仕上げとして「ソフトボーダー」なる概念が提示され、平成日本が"まだ平和なうちに"、近隣東アジア諸国との関係改善を図る必要性が説かれる。

・熱狂に煽られ、「みんなで渡れば怖くない」式に政府と国民が一体となって戦争状態へなだれ込む状況を回避すること。
・戦争を防ぐことによる利益が戦争による利益より大きいことを理解すること。
ん、リテラシーというか、メディアに扇動されない冷静な認識力を養う必要があるな。

紛争屋の外交論 ニッポンの出口戦略
著者:伊勢崎賢治、NHK出版・2011年3月発行
2012年9月8日読了