大正ロマンのイメージ形成を担うこととなった夢二の、当時の民衆生活の現代化に直結した"モダン"なデザイナーとしての一面に光を当てる。

美術学校を経ずに独自路線を貫いて時代の寵児となった夢二。セノオ楽譜や大正期に出版部数を伸ばした雑誌、とりわけ婦人誌、少女誌、児童誌の表紙画と挿画、文芸出版物の装幀には心惹かれるものが多い。
日常生活を彩る小物に和洋折衷のデザイン性を持たせるという、当時としては画期的な仕事を成し遂げた。元祖"カワイイ"が若い女性の心を掴んだというところか。

個人の自由が市民権を獲得した大正という時代に向き合い、結婚と離婚、駆け落ちと同棲を繰り返し、43歳の洋行を含め、人と違う何かを追い求め続けた夢二の49年の人生には、見習いたいものがあるな。
藤島武二を師と仰いで"夢二"と名乗り、時代の寵児となりながら、なお美術界から異端児扱いされる身の辛さを彼はいかに克服したのか。独自の芸術志向を高めつつ、淡々と仕事をこなすことで、自分を鼓舞し続けた、と思いたい。

竹久夢二 大正モダン・デザインブック
編者:石川桂子、谷口朋子、河出書房新社・2003年11月発行
2012年12月8日読了