1851年にイギリスで発行された世界地図をベースに彩色・複製され、1988年に出版された日本語版を購入した。

さっそく日本の頁を開く。ペリー浦賀襲来前らしく、「この国に関する情報は乏しい」と記されている。北海道は"Yezo地"で、まだ日本領と認識されていない。東海ならぬ"日本海"表記なのは当然として、対馬の周囲が"朝鮮海峡"になっていたりするのは、さて、いかがなものか。

アフリカ北部からケープ植民地の間の広い地域は、なるほど、"白"人類未踏の暗黒大陸となっている。今後、この地域を舞台に英仏それぞれの帝国主義が烈しい衝突を起こすわけだ。

ジブラルタルはじめ、大英帝国の領土は詳しく解説されている。特に大英帝国の屋台骨であり、イギリス東インド会社の支配下にあるインドの記述は興味深い。
20世紀初頭に"The Great Game"の舞台となる北西辺境州とアフガニスタン南東部では、実はこの時代から戦略的重要地点とされていたことがわかる。
現在のイランとパキスタンの南方はバロチスタンと表記され、アフガニスタン同様の扱いを受けていたんだな。現在でもパキスタン連邦政府の支配に反発する姿勢を見せているが、その経緯が明確になる。

まだスエズ運河(1869年開通)のない時代だ。ヨーロッパからインドへの主な陸・海路が示されるが、当時の旅行の大変さが想像される。

発行元のイギリスは、実にヴィクトリア時代の黎明期であり、女王の軍隊、測量隊、実業家、探検家が大々的に世界へ進出した。帝国の栄華を築き上げる上で指針となった詳細な地図を眺められることの満足度は高い。
本書を手元に置き、キップリングやコンラッドの小説を読む。ん、楽しい時間となりそうだ。