明治・大正を経て熟成された昭和初期の都市の中心に、彼女たちは存在した。
本書は、豊かな消費生活を満喫し、都会の主役に躍り出たモダンガールのアクティブな姿が活写された絵葉書や雑誌口絵などを題材に、時代の雰囲気を伝えてくれる一冊となっている。

絵葉書や雑誌挿絵とは言え、竹久夢二、高畠華宵、蕗谷虹児はもちろん、杉浦非水、SIN、鈴木寿雄、須山ひろし、伊藤かいち、松本かつぢ、伊藤としを、高橋春佳など、多彩かつ有名無名の作家の手がけた作品が掲載される。
欲を言えば素材の美麗デザインを100%活かすためにも、全ページをカラーにして欲しかった。

・大正から昭和初期にかけて東京・横浜、京阪神、上海、大連で活躍した職業婦人。ファッション、趣味、娯楽、旅行などあらゆる分野における彼女たちの意欲的な活動は、すなわち都市文化の活力か。

・"憧れのお姉さん"を真似たモダン少女の存在も興味深い。作者不明の絵葉書『自動車と少女』(p81)は、休日に洋装の女学生が最先端都市、東京を闊歩する様子を想起させ、1930年頃の日本の躍動感が表れている一枚だと思う。

・時代の先端を疾走するモダンガールが結婚してモダン・マダムとなり、1940年代の時代の雰囲気の中で「報国婦人」に変貌してゆくが、その最後の華やかさが哀しくもある。

「昭和初期のモダン都市を闊歩した、モダンガールがいなければ、モダン東京の姿は完全に蘇らない」(p127)
資生堂、百貨店、地下鉄、自動車旅行、円タク、飛行機、映画、カクテルとタバコ、郊外のマリン・スポーツにスキー・リゾート。戦前日本の活気を垣間見る気分を味わえた。

モダンガール大図鑑 大正・昭和のおしゃれ女子
著者:生田誠、河出書房新社・2012年11月発行
2013年10月18日読了