世界に先駆けて産業革命を経験したイギリス。世界中に確保した市場と植民地がもたらした未曾有の富は、ある種の生活様式をもたらした。
本書は、今日でも豊かさの指標でもあり、大英帝国最盛期の都市住民の夢を体現したものといえるヴィクトリア時代の屋内装飾を広く紹介する。

巻頭は、ヴィクトリア時代の室内装飾・調度を当時のまま遺した風刺画家、サンボーン氏の邸宅を紹介する。ロンドンに住まう中産階級の代表的な住宅であったテラス・ハウスには過剰なまでの装飾が施され、伝統的なアンティークと帝国各地からもたらされた流行の品々と相まって、一種のカオス世界が顕れていることがわかる。

『憧れのヴィクトリアン・インテリア』
その中心となるのは、ダイニングルームでの正餐を終えて主客がくつろぐドローイングルームであり、暖炉を中心に据えての調度品や壁紙、テーブル小物に至るまで、女主人のセンスが試される場でもあった。
・指南書として数多くのインテリア誌が創刊された。そのデザイン画から、当時の流行と人々の趣味が伝わってくる。
・観賞植物、ガラス水槽、ガラスシェードに納められた豪華時計、ピアノ、ソファー、手芸、等々。今日のリビング・インテリアの原形がこの時代にある。
・家宝を大々的に飾るインテリアは、これを"秘蔵"する日本文化と確かに異なるな。
・ジャポニスムのもたらした団扇がドローイングルームの装飾だけでなく、室内テニス(バルーン・テニス)のラケットに用いられていたのか(p29)。おもしろいな。

『ヴィクトリア時代の装飾デザイン』
この章では、隆盛を極めたタイル産業、アーツ・アンド・クラフツ運動を主導したウィリアム・モリスの「ネイチャー・テキスタイル」が紹介される。
・生活の中のデザイン。それはそれで素晴らしいのだが、芸術的なまでに装飾の施された水洗便器の姿を見ると、掃除するメイドの気苦労が偲ばれる(p36,58)。
当時は何にでも装飾を施さないと気が済まなかったのかな。

巻末に綴じられた復刻絵本"AT HOME AGAIN"には、当時の子供たちの生活様式が詰められているが、これが川端有子さんの『暖炉をめぐる物語』(p65~)により、親と断絶された"こどもだけの世界"であることがわかる。

本書自体もヴィクトリア時代の趣を感じさせてくれる美麗な造りとなっており、廉価ながら満足度の高い一冊となっている。

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The Interior in the Victorian Era
A UTOPIA FOR WOMEN
ヴィクトリア時代の室内装飾 女性たちのユートピア
著者:吉村典子、川端有子、村上リコ、LIXIL出版・2013年8月発行
2014年2月8日読了