書店万引きの現場で再開した千代と、彼女の語った兄の最期。檻の中の絶望と檻の外の死、あるいは幸運を巡る『ネズミ焼きの贈りもの』。宿命と闘って負けを選んだひとつの人生が、17歳の妹に遺したものは鉛のように重い。

表題作『ダックスフントのワープ』冒頭の軽快な語り口は、マリとの"広辞苑"的な会話の中で姿を変えてゆく。
往復書簡のような対話編。ひとりの言動がひとりに与える影響の強さ。
衝撃に彩られたラスト・シーン。
自らの創作が自らの人生にオーバーラップする、その瞬間。
傑作と呼びたい。

ダックスフントのワープ
著者:藤原伊織、集英社・1987年2月発行
2014年9月24日読了

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