明治・横浜のレトロな日常と「ちろり」嬢ちゃんの心情が丁寧に描かれる叙情画。
それは「かもめ亭」で丁寧に淹れられる一杯のコーヒーのよう。

この6巻では、マダムとちろりの「絆」がテーマのようです。

『新月』
眠れない夜。波の音とともに押し寄せる不安の連鎖がちろりを追い込みます。マダムの思い遣りに気付かなかった自分を顧みつつ、かき消された感情を振り払い、"その味"と星空を楽しむちろり。良いです。

『ブラウン夫人』
腰を悪くし外出できない常連のたっての頼み。「かもめ亭のカヒーが飲みたい」に応えるべく、お屋敷へ出かけるマダム。当初のそわそわした不安にとまどいつつ、その原因に思い当ります。かもめ亭になくてはならない存在……。そこへ現われたちろり……。
お屋敷のベッドから想いはに馳せ、香りと「かもめ亭」の情景とを愉しむブラウン夫人……。
真のサービスに触れた、云々の評論を超えた物語。

次巻では、ちろりに恋の自覚が観られるか? 楽しみです。

馬車通り(現代化されすぎていますが)を南下し、日本郵船横浜支店の壮大な建築物に魅入り、山下公園を散策し、氷川丸を眺望し、ホテルニューグランド本館の姿を楽しむみつつ、「ちろり」の時代を想像する。先日試してきましたが、なかなか良かったです。


ちろり 横濱海岸通り21番地-B 海の聴こえる喫茶店にて 6巻
著者:小山愛子、小学館・2014年10月発行
2014年10月13日読了

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