19歳で即位し、独仏露に対抗しつつ60年に渡り帝国主義政策を推し進め、20世紀を迎えて大往生を遂げた大人物、ヴィクトリア。
1851年ロンドン万博総裁を務めた夫、アルバート公を亡くしては終生を喪服を過ごし、『ウヰンゾルの後家さん』(キップリング詩集、中村為治)などと揶揄されるも、その人生は決して内に留まることはなかった。
本書は、『イギリス君主論』に著されたイメージ「君臨すれども統治せず」から遠く離れ、内政・外交に積極的に口を出す”果敢な戦う君主”、ヴィクトリアの姿を浮かび上がらせる。

・ナポレオン三世、ニコライ一世、ビスマルクとの対立と協調、かわいい孫にして敵対するヴィルヘルム二世への哀しみなど、19世紀に最高潮を迎えた欧州の王室外交。その中心を占めた"君主と"母親"の苦労の大きさよ。

・自身の治世下、貴族政治から大衆民主主義政治へと大きな変遷を遂げるなか、自由党内閣との軋轢がいやほど伝わってくる。

・1860年代のビスマルク、ナポレオン三世へのヴィクトリアの対峙はすごいものだが、アジア・アフリカは自分たちの支配下に置くことを当然視している。時代と言えばそれまでだが、何か釈然としない。特に、インド大反乱に対する圧政は大英帝国の本質を如実に顕したものだろう。この姿勢が後継者アメリカに引き継がれ、今日の"不公正な"平和維持を生み出しているのだ。

治世の最晩年に登場する辺境の新興国日本。彼女の眼にはこの国など眼中になかったんだろうな。義和団事変の際に陸上兵力の提供を打診したことが、日英同盟の端緒になるのだろうか。だとしたら、ボーア戦争は遠い国の出来事ながら、間接的に日本の運命を変えたことになる。感慨深いな。

ヴィクトリア女王 大英帝国の”戦う女王”
著者:君塚直隆、中央公論新社・2007年10月発行
2014年12月18日再読了

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