東ヨーロッパ政治体制の崩壊からドイツ統合のニュースがホットな頃の著書なので、今日的視点から読んでみた。
ヨーロッパ統合。それは独仏の永遠の和解を前提に成し遂げられた理念的かつ実際的な偉業ではあるが、前後して発生した東欧激動の余波を受け、予想のされなかった問題を内包せざるをえなくなった。

「地域市民権」(p237) 非西欧人への選挙権付与の問題。フランス・ベルギーの移民労働者、ドイツのガストアルバイターに選挙権を付与するのか。「権利の平等と社会参加の促進のために必要なこと」(p60)ではあるが、難しい問題。緑の党や社会主義勢力がいくら力説しようと、理念的には同意、感情的には反対、というのが実情だろう。在日外国人-永住権保有者を含む-に選挙権を与えること。それは自治体運営や国政への参加であり、外国勢力の間接的内政干渉につながることを思えば、ぞっとせざるをえない。
今後、我国においても「大陸からの人の流れ」が大きな問題となるに違いない。

不平等感の問題。たとえばマグレブ移民一世はともかく、フランスやドイツで生まれ、白人と同等の教育を受けながらも隠された差別意識と失業に苦しむムスリム移民二世、三世。彼らが現状と将来に絶望を抱いたとしても不思議ではない。
ならば。
非西洋人として世を送るか、それともムスリムの天国に命を懸けるか。
ISIS等のイスラム過激派に身を投じる欧州生まれの若者たち、その萌芽がここにある。

ひとつのヨーロッパ いくつものヨーロッパ 周辺の視点から
著者:宮島喬、東京大学出版会・1992年4月発行
2015年2月27日読了

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