本書は、フランスの詩人にして20世紀前半のベテラン外交官のポール・クローデルによるフランス本国向け報告書の真髄を捉えた第一級の歴史資料である。

内面を綴る日記でもなく、対外的なプレス発表でもない、いわばプロの手によるフランス本国向けのしたたかな報告。
すなわち、日本国内関係者に見せる大使スマイルでもマスメディア向けリップサービスでもなく、本国への外交書簡にしたためられた怜悧な日本分析は、恐ろしいまでの的確さを持つ。

・外交官試験を首席合格したクローデル氏は、1923年当時の日本の立ち位置を看破した。いわく、日英同盟がイギリス側から破棄され、極東で英米ブロックが構築された上に、アメリカによる対日戦見越してのシンガポール軍港化が進められた結果、日本は「恐ろしく孤立」し、世界情勢の中心軸から外れて立場を失った(p182)。そして、この形勢を利用して、極東におけるフランスの利益拡大を講じる提言がフランス本国に行われている。

・元老、山形有朋と大隈重信の対比は面白い(p55,62)。また、日本ではなかば神格化された後藤新平のことを「非常識で放埓。落ち着きのない、成り上がり」(p188)等とこき下ろしているのも興味深い。

・1922年の平和記念東京博覧会を訪問して、その実質は<征服の博覧会>であると評す。仰々しさの理由として帝国主義的理由を挙げ、台湾館、朝鮮館など植民地展示会場の他に類のない充実さを指摘する。慧眼と言うべきか。同じ報告でその他の建築物や彫刻作品などを小馬鹿にしているのは気に入らない。これが西欧人の本音かも。(p80)

・支那軍閥の懐柔策が考案され、本国に提案される。史実はこの通りに進まなかったが、現状維持と引き換えの期限付き支援、そしてアジア版ロカルノ条約の提言は慧眼的だと思う。(p418)

CORRESPONDANCE DIPLOMATIQUE TOKYO 1921-1927
孤独な帝国 日本の一九二〇年代 ポール・クローデル外交書簡1921-1927
著者:Pail CLAUDEL、奈良道子(訳)、草思社・1999年7月発行
2015年3月8日読了

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