前作『おやすみなさい、ホームズさん』から数年後、舞台をパリとモナコ・モンテカルロに移し、ベル・エポックの歌姫、サラ・ベルナール、モナコ公国の公子とその婚約者であるアメリカ人のアリス(後のアルベール一世とアリス王女)等、華やかな登場人物が加わり、アイリーンの新たな探偵物語が動き出す。

悩めるサラ・ベルナールにハムレット役を勧めたり、モンテカルロのオペラ座創設をモナコ公室に提案するアイリーン。史実とフィクションとをうまく絡め合わせた描写が面白い。

・サラ・ベルナールの気まぐれな激情と、アイリーンの放つ落ち着いた輝き(p37)の邂逅する情景なんて、華があって実に良い。

・人物像の比喩もわかりやすい。「光り輝く青い大洋」「その水面を踊りながら照り返すまぶしい陽光」(p213)は気に入った。

・死者の入墨の謎の結末は……なるほど、ミステリアスかつエキサイティング。人生を賭けても不思議ではないな(p362)。

・池澤春菜さんによる解説も秀逸。最後の「その○○ですわ、アイリーン」って、とても良い感じ。

ただ、どうしても前作に比べるとテンポがいまひとつ(特に前半)。せっかくのホームズとの対峙も期待値に至らずといったところ。70点。


THE ADVENTURESS (GOOD MORNING, IRENE)
おめざめですか、アイリーン
著者:Carole Nelson Douglas、日暮雅通(訳)、東京創元社・2013年11月発行
2015年5月11日読了

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