明治期に先進国イギリスから導入し、徐々に技術力を磨き国産化比率を上げ、ついには新幹線システムを玉成させ、鉄道輸出国としての不動の地位を得た日本の鉄道業界。
本書は、総合技術システムとしての鉄道を、主に車両を中心として技術史の観点から概観するとともに、日本各地に置かれた鉄道遺産について紹介する。

・明治から昭和・平成までを大きく鉄道開業期、自立期、充実期、発展期に分けて、時代の政治・社会情勢を俯瞰しつつ、鉄道技術の発展する過程が示される。

・神戸~下関間の山陽鉄道(山陽本線)は高速運転を前提として敷設された私鉄だったのか(p30)。兵庫の鉄道工場が廃止されたのは地元民として寂しい限り。

・技術者はイギリス人から日本人に、機関車の技術導入はイギリスからドイツに移り、国産化に至る。鉄道院の果たした役割の大きさとその適切さがよくわかる。

・線路の規格(狭軌、標準軌、広軌)、機関車の規格(前輪・動輪・後輪の数を1B、1C2、2D2等で表記)、客貨車のシャーシの規格は勉強になった。

・東京発の「超高速鉄道」(朝鮮半島を経由し北京まで!)は大正時代から計画・準備されていたのか。これが戦前昭和の弾丸列車計画となり、現在の新幹線につながることを思うと感無量だ。

・汽車製造会社、川崎重工(川崎造船所・川崎車輌)、日本車輌製造、雨宮鉄工所、丸山車輌などの民間鉄道車両製造会社の紹介も嬉しい(p48~)。

・幹線鉄道はともかく、都市鉄道・地方鉄道の発展が、従来型交通網(路面電車、水路船舶)を衰退に追い込んだとある。やむを得ないか。

・D51型蒸気機関車は、戦前に1115両も製作されたのか(p79)。

・島安二郎、島秀雄親子の日本鉄道史に遺した業績は、もっと伝えられるべきだろう(p94、p98)。

・5刷に伴い、図表は2009年時点のものに更新されているのは嬉しい。

技術には「携わった人」の思いが込められてる。
「ソフト面での技術とハード面での技術が両輪となり、インタフェース役を担う『人』という車軸で確実に結ばれ、目的地に向かって敷設したレールに従って走るさま」(p3)が、本書から伝わってくる。
輸入技術を必死にかみ砕き、次第に日本独自のものづくりに転化させた先人の努力。今度、交通博物館を訪問する際は、この観点から敬意を払って鑑賞したいと思う。


日本史リブレット59
近代化の旗手、鉄道
著者:堤一郎、山川出版社・2001年5月発行
2015年9月30日読了

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